最高裁判所第三小法廷 昭和24(れ)1724 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人鈴木重毅の上告趣意は末尾に添付した別紙書面記載の通りである。
弁護人鈴木重毅の上告趣意第一点について。
しかし原判決は、挙示の証拠を綜合して判示事実を認定したものであつて、被告
人の自白を唯一の証拠として有罪の言渡をしたものではないから、被告人の自白を
唯一の証拠としたことを前提として原判決の違憲違法を主張する論旨は理由がない。
同第二点について。
しかし数個の証拠を綜合して事実を認定する場合においては、個々の証拠を各別
に観察すれば、各証拠は事実の如何なる部分の証明として役立つかを識別すること
はまぎらわしいことがあつても、これ等数個の証拠が互に関連して相互に矛盾しな
い限り、これ等を綜合しておのづから特定の事実が認定されるにおいては、このよ
うな証拠説示の方法をとつても差支はない。原判決の証拠説明によれば、数個の証
拠を列記しておりそれが如何なる事実を証明するかを一々詳細には説明していない
が、その証拠を吟味すれば、如何なる事実の証明に役立つかを識別することは容易
でありこれを綜合すれば判示事実を証明し得るものであるから、証拠説明としては
欠くるところはない。所論のように、此の証拠は此事実を証明するものであり、彼
の証拠は彼の事実を証明するものであることを一々詳述しなくとも、違法とはいい
得ない。論旨は理由がない。
同第三点について。
しかし所論のようにAの死体は、リヤカーの上に頭を梶棒の方にして横わつてい
た場合に、これを肥溜の中に落とそうとして梶棒を押上げるようにして倒しかけた
際に、Aの足がリヤカーにつかえたとすれば、足の方から肥溜に落ち込むとは限ら
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ない。むしろ重い頭の方から先きに肥溜に落ち込むことは経験上あり得ないことで
はないから、右と同趣旨の被告人の供述を証拠として判示事実を認定したとしても
所論のような理由齟齬あるものではなく、また被告人の供述によつて充分判示事実
を認定し得るのであるから審理不尽の違法はない。論旨は理由がない。
同第四点について。
しかし論旨は結局原審の量刑不当を攻撃することに外ならないから上告適法の理
由とならないものである。
よつて旧刑事訴訟法第四四六条により主文の通り判決する。
以上は裁判官全員一致の意見である。
検察官 竹原精太郎関与
昭和二四年一一月八日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎
裁判官 井 上 登
裁判官 島 保
裁判官 河 村 又 介
裁判官 穂 積 重 遠
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